ほほえみ相談室にお子様のご相談のお問い合わせで多いのは、発達面と学習面、そして、不登校やその傾向です。そして、ご相談に来られる方は、やはりお母さんがほとんどで、子どもへの関わり方や子育ての方法についてなど、多岐にわたります。
私は、心理職に就く前に、福祉施設、小学校、幼稚園、学習塾に勤務したことがあり、また、自分の子どもを育てながら、多くの子どもたちや保護者の方々にお出会いしてきました。また、その中でたくさんの指導者にもお会いする機会を与えられ、支えられてきて今があると思います。その度に、一歩一歩、親になるとはどういうことかを、教えられ、学んできたように思います。
特に、初めての0・1・2歳児の子育てでは、今思えば、些細なことにとても神経質になってしまう自分がいました。しかしそれも、実はよくある親の傾向で、長子は親の育て方が神経質なため、神経質になりやすいとのこと。「子は親の鏡」とは、よく言ったものです。まさに、あちゃー‼️😣って感じですね。本当に、母親本人は至って真面目に一生懸命やっているのです。初めてのことで、一切経験値がなく、うまくできるか不安なため、なんでも石橋を叩いて渡るようなことにもなりかねません。
私の経験では、子どもの同級生の親が「この夏はチャンスだよね!」と、つい最近歩き始めたばかりなのに、公園でおもむろにママ友とワイワイ言いながらトイレットトレーニングを始めるのを見ては、えっ?もう?と思いながらも、私もそろそろ始めなくっちゃいけないのかなと焦ってみたり。よく食べているはずなのに、子どもの体重は平均以下で、身長は伸びているのに、体重は全然増えないから、どうしてだろうと悩んだり。
そんな時、私が頼りにしていたのは、子育ての先輩のアドバイスや育児雑誌でした。一番身近なところでは、実家の母や祖母。そして、いつもお世話になっている、子育て支援センターの保育士さんや保健師さんなどの専門職の方々でした。また、そこに講師として来られる、読み聞かせの先生やおもちゃデザイナーの先生にも、講演後によく個人的に相談に乗っていただきました。そして、ベネッセの『たまごクラブ』『ひよこクラブ』や、ジャパンマシニスト社の『ちいさい・おおきい・よわい・つよい』など、教育・保育・医療関係の書籍から情報を得ていました。
その頃から、マタニティブルーや育児ノイローゼというものがあることや名前は知っていました。しかし、自分がそれにあたるのかは当事者である私には分かりません。また、日常的に相談できるところも今のようには存在しませんでしたし、重要性も語られてはいませんでした。1990年代後半ですから、一般家庭ではインターネットも普及していなかったので、心の相談について自宅で気軽に調べることもできませんでした。
やはり、今思い返してみても、なんとも言えない孤独感・孤立感がありましたね。夫も子どももいて、経済的には普通に生活ができる安定感があり、近所に子育て家庭もたくさんあり、実家も車で少し走れば着くくらいの距離で、決して孤立しているわけではありません。また、一緒に遊べるお友達もいて、何不自由のない生活をしているようでも、このままでは、自分がダメになってしまいそうで、漠然とした不安感がありました。
そこで、二人目の長女が一歳になった頃から、いつもお世話になっている子育て支援センターの一時保育に預けて、自分の興味のある分野から学び始めました。初日は、山口県光市で開催された、絵本作家宮西達也さんの講演会でした。宮西さんの絵本の『にゃーご』は、小学2年国語の教科書(東京書籍)に載っていますが、当時は、『おとうさんはウルトラマン』からのお話が印象的でしたね。宮西さんの絵本は、登場人物の心理的な描写が巧みで、思わず声に表情をつけて読みたくなる絵本です。(絵本は私自身が好きで自宅にもたくさんありますが、その頃から、定期的に子どもを連れて下松市立図書館に通うようになりました。)
ところが、お昼になった頃、娘がお弁当を食べないからすぐにお迎えに来てくださいと電話がかかってきて、講演会場から飛んで迎えに行きました。幼い娘は突然親と離れて新しい環境に急に入ることになり、訳もわからず不安だっただろうな…と思うと、とても申し訳ないような気がして、顔を見てホッとしたのを思い出します。保育士の先生は不安そうな娘を優しく抱いて、私を今か今かと待っていてくださっていました。こんな社会的なつながりが本当にありがたいなと思うとともに、少し離れてお互いの大切さを再認識すると、親子がより良い関係でいられることや、それぞれがより成長できることを学びました。
今は少しずつでも新しいことを学んで、自分の子育てに活かすんだと信念を持って行動していました。その年はちょうど2000年で、政官民の「子どもにもっと読書を」という願いが生んだ、子ども読書年でした。ちょうど読書の秋ということもあり、あちらこちらでさまざまな講演会やワークショップが開催されました。そこへ片っ端から参加しました。帰ってきてから夫に、今日ね、こんなことを教えてもらったんよ、とか、子どもにも、この本一緒に読みたいなと思って買ってきたんよ、と言って、実際にすぐに子育てに活かせるのが楽しく、以前の日常業務をこなすだけの日々は、クリエイティブでポジティブな毎日に変わっていきました。
その頃購入した書籍の中に、今も時々見返す『子どもが育つ魔法の言葉』(ドロシー・ロー・ノルト、レイチェル・ハリス共著 石井千春訳 1999 PHP研究所)があります。この本の冒頭には、著者の出身国であるアメリカ合衆国で作者不詳で一人歩きして有名になった詩が掲載されています。天皇皇后両陛下が愛子さまを育てられる時に参考になさっていたということもお聞きしました。あなたもどこかで聞いたり見たりしたことがあるかもしれません。
『子は親の鏡』(前半)
けなされて育つと、子どもは、人をけなすようになる
とげとげした家庭で育つと、子どもは、乱暴になる
不安な気持ちで育てると、子どもも不安になる
「かわいそうな子だ」と言って育てると、子どもは、みじめな気持ちになる
子どもを馬鹿にすると、引っ込みじあんな子になる
親が他人を羨んでばかりいると、子どもも人を羨むようになる
叱りつけてばかりいると、子どもは「自分は悪い子なんだ」と思ってしまう
この前半部分は、<子育てでしないほうがいいこと>が書いてあります。
親が〇〇すると、子どもは△△するようになるという、まさに「子育て版・原因と結果の法則」です。
そして、親の在り方が子どもの人格形成に影響を及ぼすということの例です。また、親子だけでなく、その他の人間関係にも言えることですね。
本の中には、アメリカの家族の事例が具体的に書かれています。実は、実際のカウンセリング場面でも、お話をじっくりお聴きして原因と結果が見えてきた時、つまり、今、なぜこうなっているのか?が分かってきた時、最初は「じゃあ、どうしたらいいんですか?」とか、「じゃあ、〇〇したらいいんですか?」と、よく聞き返されます。
そんな時、私は、ちょっと待って、と必ずと言っていいほど、お返事をしています。
そうです、ここからがメゾパレメソッドの真髄なのです。詳しくは次回以降に譲るとして…
最後に、子どもへの関わりで気を付けていたことを少し補足しておきますと、私の場合は、煮詰まるとイライラしてしまうのが分かったので、そんな時は一旦離れて、閉鎖的な密な関係にならないようにしていましたね。風通しをよくしたのです。子育ては、関係性が深い家族間のやり取りです。どうしても個々が近すぎて、自分と他者の境界線が曖昧になりやすく、感情的になりがちです。これは、本当に、世界中どこにでもあることなのです。そして、このことは、心理学や行動科学を学んでから、理論的にも理解でき裏付けを得たことですが、基本的な人間の心理や学習の仕方を理解し日常生活に応用していくと、トラブルを未然に防いだり回避したりすることができるようになります。
私が心理師になった経緯と、未来に描いているビジョンをご紹介しているホームページはこちらです。それはまだ読んだことがないという方は、引き続き、ぜひ読んでみてください。